二次障害を防ぐ叱り方

自閉症スペクトラム障害の子供を育てるにあたって、生まれた瞬間から自閉症と判明しているケースは多くないです。

親が自閉症と認識していないときに、食事を摂らない、言う事を聞かない、突飛な行動をする我が子を見て、まず行動することと言えば”叱ること”だと思います。

この叱り方を間違ってしまうと、二次障害を引き起こす可能性があり、自閉症の子供を育てる上で知識として二次障害を知っておくことは大事であると言えます。

二次障害とは

二次障害とは、子供の障害を周りが理解していない、もしくは障害と認識されていない事で、他人よりも劣る存在としてストレスを抱えて、先天性の障害とは別の後天性の問題を引き起こしてしまうことを言います。

その問題とは、身体に悪影響がでる場合もあれば、心理的に悪影響を及ぼす場合もあり、該当者によって様々です。

「二次障害」そのものは病名ではありません。

また、これぞ二次障害とあてはめられるような定義も定まっていません。

例えば、自閉症スペクトラム障害と判明せずに大人になってしまい、社会の場でうまく行動できなくて、家から出られなくなってしまった。

他人と比較されることが当たり前である一般社会に、比較対象が健常者である時点でかなりのビハインドを持っています。

健常者が当たり前に出来ることができなかったり、普通の人とは違う行動をとったりすると、「変な人」「劣っている人」というレッテルは容易に付いてしまいます。

次第に、叱られる回数も増えますし、好奇の目で見られることもあるでしょう。

なぜ人と同じことが出来ないのかを悩むうちに、「自分は駄目だ」「自分は劣っている」と思い込み、何でも他人と比較される社会へ出ることができなくなり、最悪の場合うつ病になってしまうかもしれません。

こういった事例は、まさに二次障害と言えると思います。

自閉症と判明するまでの我が家の叱り方

自閉症スペクトラム障害と診断されるまでの娘は、手の付けれらないヤンチャな子供という印象でした。

・食事に興味がない。
・他人に警戒心を持たない。
・言葉を覚えない。
・文字が書けない。
・落ち着きがなく、階下の住人から壁を叩かれる。

子育ての過程で特にストレスを感じたのは、食事に興味がないことと、階下の住人から壁を叩かれることです。

食事中にやっていた叱り方

ママは栄養のあるものをたべてほしくて、料理をカラフルにしたり、お皿を可愛くしたり、量を少なめにして食べきる経験を積ませたり、色々な施策を施します。

特に、料理のデザインには気を使っていて、娘の好印象を引き出そうとしていました。

自閉症の認識がないから、沢山の言葉で伝えます。

ママ
ハンバーグ美味しいよ。食べてごらん

ママ
ケチャップでハートマーク描いたよ。可愛いでしょ?

ママ
お皿をピンクにしたよ。ピンク色好きでしょ?

でも、娘が食べるのは少なめに盛った量の半分の白米。

しつこくおかずを食べることを促すと、箸を放り投げたりします。

ママは、次第にストレスがたまり、叱るというより怒るわけです。

ママ
箸で遊んじゃ駄目でしょ!

バチーンと手を叩きます。

ママ
もういい。明日まで何も食べるものないからね

食事を下げて娘の反応をみます。

残念ながら、解放されたと言わんばかりにリビングを走り回ります。

おおらかな性格のママですが、食事に対するストレスは強烈だったらしく、鬼の形相で娘を睨みつけていたこともありましたし、実際に手を出してしまったこともあったわけです。

うるさい時にやっていた叱り方

現在は鉄筋マンションに引っ越して、それほど気にしなくなったのですが、自閉症診断前に住んでいたのは木造アパートの二階。

一階には、同じように走り回る男の子がいるお宅だったのですが、他人の家の足音には我慢ならないのでしょう。

娘が走り回ると、ガツンガツン壁を叩いてきました。

娘は、眠る直前が一番興奮状態に入るらしく、家中をドタドタ走り回ります。

抱きかかえるように押さえつけても、大暴れして逃れ、眠くなるまで走り回ることを止めません。

パパ
頼む。静かにしてよ。

懇願するように抱きかかえながら語りかけるのですが、言う事を聞いてくれません。

また、背後から首を絞めてくる”遊び”も好きで、最初は付き合っていたのですが、無限に絡みつかれるとこちらも限界がきます。

パパ
止めろって言ってんだろ!

大声で威嚇して怖がらせてやっと止めさせることができます。

30分間くらいは。

時には顔を両手でがっちり押さえて、思いっきり怖がらせて、暴れるのを止めさせたこともあります。

こんな叱り方をして娘はどうなったか?

言葉も拙いながらも多くしゃべり始めている5歳の娘。

絵を描くのが大好きですが、いまだに走り回ることも大好きです。

時に、勢い余ってパパにぶつかることもあるわけで、そうすると、

ごめん!ごめんね!大丈夫!?ホントにごめん!ごめん!ごめんね!

ものすごく謝ってくるのです。

こちらは痛い思いもしていないし、なにより怒ってもいません。

でも、まるで「お願いだから殴らないで」かのような謝り方をしてきます。

これは、自閉症と診断される前におこなっていた叱り方が起因していると思っています。

人と人、親と娘の付き合いが少しずつ出来てきた現在においても、当時の叱り方が尾を引いていることに、非常に後悔をしています。

叱り方に正解はあるのか

療育センターで学んだ叱る方法にはいくつかのポイントがありました。

目的を定め目的意識をくすぐる

前回、以下の記事を書きました。

お皿を綺麗にするたびにシールを貼らせるという目的意識と達成感を味わってくれる作戦です。

全部綺麗にしたら、デザートのご褒美です。

それでも食事に対してやる気がないときの叱り方は、

ママ
食べないの?じゃあ今日はデザートいらないんだ?

自閉症の子供としっかり共有できた目的は、かなり拘る傾向があります。

食事に限らず、物事を途中で止めると言う事は、その目的を忘れてしまっている時だと想定できます。

なので、食事を止めた行為そのものを叱るのではなく、目的達成できないけどいいの?と問いかけるわけです。

デザート食べるよ~

“悪いこと”だけを叱る

叱ると怒るは紙一重な部分があります。

夜中に走り回ったり、おもちゃを投げてきたり、どうしてもイラっとして怒ってしまいがちです。

ここの言葉選びが自閉症の子供には重要です。

“うるさい”、”痛い”、”嫌い”、”悲しい”、”怒っていると言う固形の物体がない言葉は伝わりません。

感情的な言葉を極力さけて、止めてほしい行為をやってほしい行為に変えて叱ります。

別の目的を与えて気をそらすことができればベストですね。

伝わらない叱り方
下に住んでる人に迷惑だから走り回らないで!
伝わりやすい叱り方
パパの横に座って、絵本読もう

自尊心を傷つけない

ママ
なんでこんな簡単な事ができないの!?
パパ
本当に最悪な子だね、おまえは

自分たちへの戒めの意味を込めて、以前に娘に投げつけた言葉がこれらです。

こんな言葉に親が慣れてしまうと、事あるごとに娘の人格を否定するような言葉が、より悪化した状態で出てくることでしょう。

娘がもしも長年こんな言葉を受け続けていたら、二次障害と言われる症状が現れることも容易に予想できます。

酷い親だと思われると思いますが、ストレスで感情がこじれると、自分たちでも引くほど、こんな汚い言葉が出てきてしまいます。

それでも、おもちゃを人にぶつけたときなど、どうしても否定的な叱り方をしなければならないときは、

ママ
おもちゃを投げるのは悪いことだよ!

 

等と、子供個人ではなくて、おもちゃを投げる行為と限定して否定をすることも必要となってきます。

叱り方に正解はない

私たちは幸いにも、第三者からの進言がきっかけで療育センターで診断を受け、自閉症スペクトラム障害と判明しました。

そして、恐怖や痛みしか伝えられていなかった叱り方を改めました。

・目的を定め、目的達成心をくすぐること
・悪いことではなく、やってほしいことに変換して伝えること
・自尊心を傷つける言葉を口にしないこと

これらを基準にして、叱るときは言葉を選んで叱ります。

これで二次障害を防いだり、健全な成長を促せるのか、それはまだ分かりません。

その効果がわかるのは、娘が中学生くらいになってからか、大人になってからかもしれません。

親だけが気をつけていればよい話ではないですから、学校や社会にも協力を得なければならないでしょう。

今はただ、娘が必死に謝るようになってしまったことを戒めにこの記事を書かせて頂きました。

ごめん!ごめんね!大丈夫!?ホントにごめん!ごめん!ごめんね!

 

こっちこそ、ごめんよ。